はじめに

若いうちに便秘に悩まされたことはなかったのに、加齢に伴って便秘になったという人は大勢います

人は年齢を重ねるたびに便秘になりやすく、事実、男女の違いを問わず、30代と60代では便秘のリスクが2倍に膨れ上がると言われています。

便秘は女性に多く見られる一方で、そのピークは高齢者にある

出典:高齢者の便秘 | 剤盛堂薬品株式会社

参考サイト

高齢者の便秘の原因と解消法
高齢者の便秘 | 剤盛堂薬品株式会社
「排せつ」のトラブル<2>便秘の種類とその予防~プロが教える在宅介護のヒント | 介護ポストセブン

腸の働き

  • 口から取り入れた食べ物は胃で消化され、小腸で栄養と水分の9割が吸収される。その後、小腸で吸収されなかった液状の食べ物の残りかすは、大腸へと送られてきます。大腸は、盲腸→上行結腸→横行結腸→下行結腸→S状結腸→直腸から成り、蠕動運動(大腸壁の筋肉の伸縮運動)によって、小腸から送られてきたものを先へと進めながら、徐々に水分を吸収していき、液状だった残りかすを固める働きがあります。

便秘とは

  • 「便秘」とは、腸の中で大便が滞ってしまった状態です。便秘のはっきりした定義はなく、一般的には「3~4日以上便通がない」場合に、便秘と言われることが多くあります。ただ、毎日排便があっても、「スッキリ便が出ない…」「便が硬い…」といった症状を不快に感じていれば、便秘と言うこともあり、排便の頻度や不快感の有無で判断します。

機能性便秘と器質性便秘

機能性便秘

腸の働きが鈍くなったり、けいれんするなど、機能が悪くなって起きる

器質性便秘

腸の中で炎症を起こしたり、腫瘍(ポリープなど)ができるなど、腸における病気が原因で、腸管内が狭くなることによって起きる

  • 多いのは「機能性便秘」の方で、とくに高齢者の場合は、腸の働きが低下し、大便を押し出す力が弱くなったために起こる便秘が多く見られます。

高齢者は機能性便秘の中でも弛緩性便秘と直腸性便秘になりやすい

弛緩性便秘

  • 腸の蠕動(ぜんどう)運動が悪くなって起こるのが弛緩性便秘です。
  • 蠕動運動が弱ると、大腸のあちこちに便が残り、なかなか直腸へたどり着かず、排出されません。
  • 大腸にとどまる時間が長い分、水分を失った便は硬くなり、さらに出にくくなる悪循環が起きます。長く腸にとどまっている「宿便」はガスを発生するため、お腹が膨らんでくることが多く見られます。
弛緩性便秘の原因
  • 生活習慣の変化
  • 食事の変化
  • 水分不足
  • 腸内環境の悪化
  • 食事をとる口の機能の低下(噛めない、義歯が合っていない、歯周病がある)
  • 心配事によって起こる不眠やストレス
  • 運動不足
  • 普段の姿勢(円背などで内臓が本来あるべき位置からずれ、腸がよく動かない)
  • 薬の影響(便秘薬の使いすぎも含む)
  • 病気・治療の影響
  • 経管栄養の影響
  • 手術の影響

直腸性便秘

  • 大腸の出口に当たる直腸に硬い便が溜まり、自力で出すことができなくなってしまうのが直腸性便秘です。
  • 本来、便が直腸に至ると、直腸の壁が伸びることが刺激となって、便意が起こります。しかし、そのときに排便できなかったり、刺激への感受性が低下して便意がなかったりすると、便が溜まるのです。腹筋や肛門付近の筋肉の力が弱り、いきめなくなることも影響している場合があります。
  • 横になって過ごす時間が長い人、寝たきりの人に多く見られます。
直腸性便秘の原因
  • 排便姿勢(排便に適した「考える人」の座位)がとりにくい、とれない
  • 排便機能の廃用(肛門括約筋や肛門挙筋など排便するときに使う筋肉などが低下している)
嵌入便とは
  • 直腸に溜まった便のことを嵌入便(かんにゅうべん)といい、そのせいで肛門は締まりが悪くなります。このとき下剤を使うと下痢が起き、嵌入便の隙間を、下痢状の便が流れ出て便失禁が起こり、便秘の解消にはならないことが多いです。
嵌入便への対応
  • 嵌入便があるときは、まずそれを出し切ることが大切
  • 嵌入便の状態によって摘便(てきべん)または座薬や浣腸で嵌入便を取り除いてから、弛緩性便秘と同様に腸のはたらきを高める予防的ケアが必要です。摘便とは、自力で排便ができない人の便を看護、介護に当たる人が指で取り除く行為です。医療行為に当たるので、訪問看護師かご家族が行うことになります。単に便を取り除くだけではなく、便の排出に合わせてご本人にいきんでもらったり、下腹部の指圧(後述、「の」の字指圧)を併行して、自然な排便の感覚を取り戻してもらうように誘導することも大切です。

高齢者が便秘になりやすい理由

  • 加齢に伴い、腸液の分泌量が低下します。これが高齢者の便秘症の原因の一つです。
  • 腸の働きが低下する
    • 加齢に伴って、腸の働きが低下し、大便が腸にとどまる時間が長くなることによって、水分が吸収され便が硬くなって出にくくなる。
    • 腹筋周りの筋肉の衰えは腸の動きを悪くする
  • 便を押し出す力が弱くなる
    • 排便するときに必要な腹筋や肛門括約筋が弱くなってしまい、便を押し出しにくくなる。
  • 便意を感じにくくなる
    • 大便が直腸に到達すると、直腸の神経が感知して大脳を刺激し、便意を感じるが、直腸の知覚が低下して便意を感じにくくなる。そのため、排便のタイミングを逃してしまう。
  • 食事量の減少
    • 歳を取ると消費カロリーも少なくなり、消化機能も衰えてしまいますので、どうしても食事の量が減ってしまいます。食べる量が減ると便の量も減ることになり、排便をする習慣が付かなくなってしまうのも問題です。さらに、食事量と同時に水分を取らなくなるのも便秘の一因となります。トイレや尿漏れを気にして水分を取らなくなると、ただでさえ少ない便から水分まで失われ、固くなってしまいます。固く、少ない便は、若い人にとってですら便秘の原因になるので、高齢者ならばなおさらです。
    • 高齢になると、若い頃に比べて、食事の量が減ってくる。
      すると、大便の量が少なくなるため、便意を催しにくくなる。
  • 薬の影響
    • 便秘の副作用が出やすい薬としては、「抗生物質」や「抗うつ剤」が代表的

便秘を解消するためのコツ

  •  トイレに行く習慣をつける
  •  便意がなくてもトイレに行く
  •  運動をする、適度に体を動かす
    • 高齢になると運動不足になりがちで、それによって便を押し出す腹筋が弱くなってしまいます。
      適度に身体を動かすことによって、全身の血行が良くなり、胃腸の働きが活発になりますし、腹筋の力が高まって、排便しやすくなります。
  • 食事は規則正しくとる
    • 食事の時間が不規則になると、胃や腸などの機能を司る自律神経のバランスが崩れてしまいます。そのため、食事は1日3食、規則正しくとることが大切です。
      また、食べ物が胃に入ると、反射的に排便が促されますが(胃・大腸反射)、この反射は朝が最も強いので、毎朝決まった時間に朝食をとるようにしましょう。
  •  食物繊維が豊富な食べ物を積極的にとるようにする
    • 食べ物に含まれる食物繊維は、胃や腸で消化・吸収されないまま、大腸へと進み、腸内の水分を集めて便を軟らかくしたり、大便を形作ったりする働きがあります。
      食物繊維には、水溶性(水に溶ける)と不溶性(水に溶けない)の2つがあり、両方の食物繊維をバランスよくとることが大切です。(水溶性食物繊維:海藻類、果物類、野菜類など
      不溶性食物繊維:穀物類、いも類、豆類、野菜類など)

 

長い間便秘症に悩んている高齢者では、刺激性下剤や浸透圧性下剤を使っても排便がスムーズでなく、排便時に強いいきみが必要で辛いと感じることがあります。

いきみは血圧を上昇させます。いきむときの血圧上昇は心血管疾患のリスクとなります。

また、高齢者は便秘以外のさまざまな疾患ですでに多くの飲み薬を使っているため、便秘の薬とそれらの薬との相互作用に注意が必要です。

たとえば、便秘に対して酸化マグネシウムを使っても、併用している薬によっては相互作用が原因で効果が弱まることがあります。

 
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