はじめに
この記事では過敏性腸症候群原因や対処法についてまとめました。
過敏性腸症候群ってどんな病気?
過敏性腸症候群は、おもにストレスが原因となり、下痢や便秘を慢性的にくりかえす病気です。お通じの異常以外にもお腹の痛みや不快感を感じることが多いです。ストレスの多い先進国では多い病気です。
過敏性症候群は心身症の1つと考えられています。その理由は、血液検査や内視鏡検査を行っても異常を認めないからと、症状がストレスで悪くならです。
過敏性腸症候群で下痢や便秘などのお通じの異常を認めるのは、腸の運動や分泌機能の異常によるものです。
以前は、過敏性大腸症候群と呼ばれていました。しかし、運動の異常や分泌の異常は大腸だけでなく小腸でも起こると考えられるようになりました。そのため、現在は過敏性腸症候群と呼ぶのが一般的になりました。
過敏性腸症候群はどんな年齢の人に多い?
過敏性腸症候群は、20~40歳代という比較的若い年齢の人に多いです。
若い世代に多いため、学校生活や仕事に支障をきたすなど、生活の質を低下させる原因になることが問題となっています。
過敏性腸症候群に男女差はあるの?
過敏性腸症候群には、男女差があります。
人数の比は男:女で1対1.6です。つまり、女性にやや多くみられます。
現代社会と過敏性腸症候群
過敏性症候群に悩む人の数は現代社会になり急に増えてきています。
特に、日本を含む先進国に多いです。ストレスが多い社会が原因であると考えられています。
過敏性腸症候群が疑われる人はどんな人?
定期的にひどい便秘に悩まされたり、緊張するとお腹を下すという人の多くがこの過敏性腸症候群ではないかともいわれています。
過敏性腸症候群になりやすい人
過敏性腸症候群などの心身症は自分の喜怒哀楽をうまく言葉で表現できない、感情を自覚できない「アレキシサイミア(失感情)」傾向の人がなりやすいです。
辛いという気持ちを意識したり、怒りや悲しみを言葉で表現できないので、代わりに身体が”辛い”と表現することで症状が起こります。辛いという気持ちを意識できないと、ストレスに気づかないため、ストレスにさらされ続けるうちに身体が悲鳴をあげてしまうのです。
特に芸術家など繊細で神経質な人ほどかかりやすい
過敏性腸症候群とほかの腸の病気の違い
- 大腸がんや潰瘍性大腸炎などのほかの腸の病気は血液検査や大腸内視鏡検査などで腸に異常が認められます。しかし、過敏性腸症候群は検査で異常がないのにつらい症状が長く続きます。
過敏性腸症候群は検査で分かるの?
過敏性腸症候群は血液検査、レントゲン検査や内視鏡などの検査をしても身体的な異常は見られません。
過敏性腸症候群の人はどれくらいいるの?
- 日本人のおよそ7人に1人が過敏性腸症候群に当てはまると推定されています。
- 日本人では10〜15%に認められ、消化器科を受診する人の3分の1を占めるほど、頻度の高い病気です。
過敏性腸症候群の症状は男女差があるの?
男性では腹痛やお腹の不快感をともなう下痢型が、女性では便秘型になることが多いようです。
過敏性腸症候群の原因
- 過敏性腸症候群では、消化管運動異常、消化管知覚過敏、心理的異常の3つが認められます。ただ、これらの異常を引き起こす真の原因はわかっていません。
- 一部の患者さんでは、感染性腸炎のあとに発症することが明らかになっており、何らかの免疫異常が関わっている可能性も指摘されています。
- 過敏性腸症候群を発症する原因は、はっきりとはわかっていません。
- 一時的なストレスから発症することから神経症、うつ病の一種と考えられることもあるが、これは間違いで、あくまでも脳と腸の情報相関の過敏が主な原因である
- ストレスにともなう自律神経の異常によって、腸のぜん動運動に障害をきたすことで起こります
- 脳と腸は深い関係があるので、脳が強いストレスを感じると、腸のぜん動運動に異常が生じ、下痢あるいは便秘の症状を起こすことがあります。
- 過労や睡眠不足によって体が疲れたり、食事が不規則な生活が続くと体がストレスを感じ、腸のぜん動運動に変化が生じます。異常に活発化して下痢を引き起こしたり、逆にぜん動運動が鈍くなって便秘を引き起こすことになります。
- IBSによるおなかの不快な症状の原因はストレスといわれています。
ストレスと過敏性腸症候群
ストレスは、症状を悪化させる要因となります。
最近の研究では、何らかのストレスが加わると、ストレスホルモンが脳下垂体から放出され、その刺激で腸の動きがおかしくなり、過敏性腸症候群の症状が出るといわれています。
さらに、この動きが繰り返されることで、腸が刺激に対して「知覚過敏」になり、ほんの少しの痛みや動きから、脳のストレス反応を引き出してしまい、症状が強化されるという悪循環に陥ってしまうのです。
脳と腸の悪循環と過敏性腸症候群
出典:田辺三菱製薬|セレキノンS 原因はストレス?!過敏性腸症候群(IBS)とは
私たちの脳と腸は密接に情報を交換し合っている
ストレスを受けると、脳からストレス関連ホルモンが分泌されて消化管に働きかけ、腸の働きを乱し、下痢や便秘といった症状を引き起こします。
下痢や便秘といった体調の変化は、「電車の中でおなかが痛くなったらどうしよう」「大切な会議があるのに、途中でトイレに行きたくなったら困る」といった新たなストレスになります。それに加えて、IBSの患者さんでは、痛みに対して敏感になっているため、ちょっとした刺激にも腸管が反応して、便通の異常やおなかの強い痛みといった症状を起こします。
こうして体が感じたストレスは、脳へと届けられます。すると、再びストレス関連ホルモンの分泌が促されて、おなかの痛みなどを引き起こし、IBSの症状が悪化していきます。この悪循環を「IBSスパイラル」と呼んでいます。
過敏性腸症候群の症状
出典:過敏性腸症候群 | 東京日野市 森末クリニック公式ページ|豊田駅 下肢静脈瘤 日帰り手術 橋本病 内科 胃腸科
- 症状は主に便通の異常
- 症状としては下痢が多い
- 腹痛もしくは腹部不快感と便通異常
- 腹痛は、左下腹部に最も多くみられますが、部位が一定しないものも少なくありません。
- 腹痛の性状は、発作的に起こる疝痛(せんつう)(さし込むような痛み)、または持続性の鈍痛のいずれかで、便意を伴っていることが多く、排便後に一時的に軽快する傾向を示します。
- 排便により、一旦は症状が軽快しても、再びぶり返すことが多い
- 一般的に、食事によって症状が誘発され、睡眠中は症状がないという特徴があります。
- 症状は精神的なストレス、生活の乱れによって引き起こされることが多い
- 通勤や通学の電車の中、大事な試験の前。そのような精神的なストレスを感じる状況で、突然おなかが痛くなり、下痢や便秘に悩まされる
- その他、腹部膨満感、腹鳴(ふくめい)(おなかがごろごろ鳴る)、放屁などのガス症状も比較的多くみられます。また、頭痛、疲労感、抑うつ、不安感、集中力の欠如など、さまざまな消化器以外の症状もみられることがあります。
過敏性腸症候群で下痢や便秘が起こる理由
IBSによる下痢や便秘は、大腸が過剰に運動することが主な原因で引き起こされています
運動亢進性下痢
大腸の蠕動運動が亢進し、内容物の通過時間が短くなり、水分を充分に吸収できなくなることで起こる下痢
過敏性腸症候群の下痢はこれ
痙攣性便秘
分節運動が強すぎるために大腸が痙攣をおこし、腸管が細くなって便の通貨障害が起こる
糞便はコロコロと小さく、うさぎの糞のようになる
過敏性腸症候群の便秘はこれ
重症の過敏性腸症候群ではどのようになることがあるの?
決して致命的な病気ではありませんが、電車の中などトイレのないところに長時間いられないなど、生活の質(QOL)を著しく損なうので、患者さんの不安や苦痛は一般的な慢性疾患の中でも大きいといえるでしょう。
重症の場合は、トイレの問題で学校や会社に行けなくなったり外出を控えるようになったりするなど、生活の質を低下させることがあります。
過敏性腸症候群にはどのような種類があるの?
便形状に基づくRomeIV基準により、以下の4タイプに大別される
IBS(過敏性腸症候群)には、その症状によって慢性下痢型IBS、便秘型IBS、下痢と便秘を交互に繰り返す混合型(交替型)IBS、3つに分類できない分類不能型(その他)の4タイプがあります。これらは便の形状によって分類されます。
下痢型IBS
出典:田辺三菱製薬|セレキノンS 原因はストレス?!過敏性腸症候群(IBS)とは
下痢型IBSとは
下痢型IBSの人は泥状便や水様便が多いです。
下痢型IBSは20台の男性に多いです。
通勤電車の中で腹痛が起こり、駅のトイレに駆け込む、というのが典型的です。
下痢型IBSの症状
突如として起こる下痢が特徴です。突然おそってくる便意が心配で、通勤や通学、外出が困難になります。また、そうした不安が、さらに病状を悪化させます。
普通の下痢と下痢型IBSの違いは?
下痢型IBSが単純な下痢と大きく違うのは、おもな原因がストレスであることと、腹痛やおなかの張り、おなかがなにか気持ち悪い、おなかが鳴る
といった腹部症状をともなうことです。また、排便によってその症状が軽減することもIBSであるかどうかを見極める目安になります。
下痢型IBSの原因
おもな原因はストレスです。
ストレスがあるとどうして下痢型IBSになるの?
腸と脳は神経によってつながっていて、脳が不安やストレス(必ずしも自覚できるとは限りません)を感じると、その信号が腸に伝わって腸の運動に影響を与えることがわかっています。
下痢型IBSの患者さんでは、この信号が伝わりやすくなっているため、腸が過剰に反応してしまうのです。
下痢型の過敏性腸症候群の症状の特徴は?
- 少しでもストレス (生体)や不安を感じると下痢を引き起こす。神経性下痢などとも呼ばれる。
- 通勤・通学の途中で、試験の前に、大事な会議の前に、旅行先で、急におなかが痛くなりトイレに駆け込む、慌ててトイレを探すなどの症状があります。
- 大事な場面でなぜかおなかを下してしまうなどの症状があります。
- 大事な商談中でも我慢できない便意が起こって、中座せざるをえなかったり、営業車の運転中に腹痛が起こったりというケースもある。
- 下痢型では、急激な腹痛と便意をともなう1日3回以上、水のような便が排泄されます
便秘型IBS
出典:田辺三菱製薬|セレキノンS 原因はストレス?!過敏性腸症候群(IBS)とは
便秘型IBSの人は硬い便・コロコロ便が多いです。便秘症状は女性に多いです。
便秘型IBSの症状
週3回以下に排便回数が減少します。排便時には腹痛をともない、強くいきまないと便が出ないことがほとんどです。便が出てもウサギの糞状の硬いコロコロとした便で、残便感が残ります。
腸管がけいれんを起こして便が停滞します。水分がうばわれた便はウサギの糞のようにコロコロになり、排便が困難になります
混合型IBS
出典:田辺三菱製薬|セレキノンS 原因はストレス?!過敏性腸症候群(IBS)とは
泥状便・水様便になったり、硬い便・コロコロ便になったりするのを繰り返します。
腹痛および腹部の違和感、下痢と便秘が複数日間隔で交互に現れる(交代性便通異常)
分類不能型(その他)のIBS
どれにも当てはまらないIBSも存在します。
過敏性腸症候群の診断
- まずは炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)及び大腸癌ならびに虚血性大腸炎、感染性胃腸炎、大腸憩室症などの腸疾患、さらに婦人科系疾患、泌尿器系疾患、後腹膜疾患など器質的疾患などの可能性を除外した上で診断される
- 診断の第一段階は、特徴的な自覚症状のパターンから、まずこの病気を疑うことです。次に、似たような症状を示す他の病気(腸のポリープやがん、憩室、潰瘍性大腸炎、クローン病などの器質的疾患)がないことを検査で確認します。
過敏性腸症候群を自覚症状から診断する方法
自覚症状からの診断方法として、ローマ基準という世界的に標準化された診断基準があります。次の(1)および(2)の症状が3カ月以上存在する場合に、この基準を満たすと判定します。 (1)排便によって軽快するか腹痛もしくは腹部不快感、または排便回数もしくは便の硬さの変化を伴う腹痛もしくは腹部不快感 (2)次の症状の2つ以上を伴う排便障害……排便回数の異常、便性状の異常、便排出異常、粘液の排出、鼓腸(こちょう)または膨満感
過敏性腸症候群の予防
ストレスの軽減
- 過敏性腸症候群は、ストレス社会に起こる現代病ともいわれています。そのため、ストレスを溜めないようにするのが一番の予防法です。多忙な毎日を過ごしていても、家に帰ったら読書やテレビを楽しむ、ゆっくりとぬるめのお風呂につかるなどの息抜きの時間を持つようにして、ストレスを軽くする生活を心がけましょう。
- 運動や趣味など、楽しくリラックスできる方法をもつことは、IBSの大敵であるストレスの解消に繋がります。
- 趣味や運動など、自分に合った方法でストレスを発散しましょう。
規則正しい生活
- 毎朝決まった時間に起きて、なるべく同じ時間に3食きちんと食べることで、体のリズムが整っていきます。睡眠時間が足りなくてつらいときは、朝日を浴びるとスッキリと目覚めることができます。また、短い時間でも深い睡眠を得られるように自分に合った枕を選ぶなど、睡眠環境にもこだわってみましょう。
- 自分に合った食事、睡眠、排便のリズムをみつけると、時間や気持ちにゆとりができ、ストレスを軽くすることに結びつきます。
- 規則正しい生活を心がけ、十分な睡眠・休養をとりましょう。
過敏性腸症候群の治療
薬を適切に調整したうえで、自分の症状を受け入れ、症状と上手くつきあっていくストレス・マネジメントの方法を一緒に考えていく治療法が効果的です。
過敏性腸症候群の食事療法
- 下痢を起こすタイプの人は冷えた食事や飲み物、そしてなるべく牛乳などの乳製品や高脂肪の食事も避けて、腸に刺激を与えないようにしましょう。便秘を起こすタイプの人はキャベツやゴボウ、バナナ、納豆などの繊維が豊富な食品を積極的にとって、自然にお通じを促しましょう。
- 食事は胃腸にかかる負担を減らすため、ゆっくりよくかんで食べましょう
- 暴飲・暴食は避けましょう
- 偏食を避け、バランスのとれた食事を心がけましょう
- 食事時間を守り、規則正しい食生活をしましょう
- 症状(下痢・便秘)により、食事内容に注意しましょう
下痢型過敏性腸症候群の食事の注意点
- 消化の悪いもの(高脂肪食、乳製品など)は控える。
- 香辛料など、刺激の強いものは控える。
- アルコールを大量に摂取しない。
- 冷たい飲食物は避ける。
便秘型過敏性腸症候群の食事の注意点
- 水分補給をする。
- 食物繊維を摂取する。
- 乳酸菌を含む発酵食品(ヨーグルトなど)を摂取する。
- 香辛料など、刺激の強いものは控える。
市販薬
下痢が続くというときは下痢止めや、下痢に効果があるとされる漢方薬を服用してみましょう。便秘の解消には、便秘薬や健胃消化薬が有効です。とくに漢方薬は自然に近いお通じを促すのでおすすめです。また、腸内のバランスを整える効果がある乳酸菌が含まれた整腸薬などもいいでしょう。
過敏性腸症候群の合併症
IBSにより、不眠や不安・抑うつなどの症状が出る方もおられます。
セロトニンと腸の蠕動運動
出典:過敏性腸症候群 | 東京日野市 森末クリニック公式ページ|豊田駅 下肢静脈瘤 日帰り手術 橋本病 内科 胃腸科
セロトニンというと、うつ症状と関連してイメージする人が多いかもしれません。しかし実は、体内のセロトニンのうち、脳などの中枢神経に存在しているのはわずか1~2%程度で、残りの約90%は腸内に存在しているのです。
セロトニンが「セロトニン受容体」と結合すると、腸のぜん動運動が異常をきたし、下痢や腹部症状を引き起こすのです。