はじめに
便秘を改善する食べ物としてヨーグルトや食物繊維を多く含む野菜などがよく知られています。
しかし、実はきなこもヨーグルトや野菜に負けず劣らず、便秘を改善するのに役立つ食品の一つです。
ですから、便秘で悩んでいる方は、ヨーグルトや野菜と合わせてきなこも体に取り入れることで便秘の症状を軽くできます。また、もしヨーグルトや野菜があまり好きではないものの、きなこなら好きだという場合には、きなこを意識的に食べることで便秘を改善できます。
この記事では、きなこが便秘改善に有効な理由とおすすめの食べ方について解説します。
きなこは女性の悩みが解消できる食品
きなこは、炭水化物やタンパク質、ビタミン、ミネラル、脂質、カルシウムなどを豊富に含んでいるため、栄養バランスにとても優れています。ですから、健康増進にとても役立つ食品です。
きなこが豊富な栄養を含んでいるのは、大豆を原料にして作られるからです。きなこを食べることで大豆の栄養を体に取り入れることができるのです。
きなこの栄養価はとても高いので、実際、別名で「畑の肉」とも呼ばれています。
また、きなこに含まれるイソフラボンは美容効果や更年期障害を予防する効果をもっており、サポニンはダイエット効果をもっています。
そのため、きなこは便秘の方はもちろん、美しくなりたい女性や閉経前後で更年期のつらい症状に悩む女性、ダイエットに励んでいる方にも有効な食品です。
以下では、きなこの美容と更年期障害の予防、ダイエット効果について説明します。
美容効果
きなこはイソフラボンを含んでいるため、美容にいいです。
イソフラボンとは、赤ワインなどにも含まれるポリフェノールの一種であり、女性ホルモンの一つであるエストロゲンに似た働きをします。
エストロゲンは女性の美しさや若々しさの源です。肌の新陳代謝を促して肌を若々しくしたり、髪のつややはりを保ちます。
エストロゲンが充分な女性の美しさは地デジの画面に、不十分な女性のそれはアナログテレビの映像にたとえられます。
このようにきなこに含まれるイソフラボンはエストロゲンに似た働きをするため美容にいいです。
更年期障害の予防
前述のとおり、きなこにはイソフラボンが含まれます。イソフラボンはエストロゲンと似た働きをもち、更年期障害を予防します。
更年期とは、女性が年をとるにつれて子供を産むことができるカラダから子供を産めないカラダに変化する移行期のことであり、閉経の前後5年間、トータル10年間の時期のことです。
更年期障害とは、この更年期にさまざまな症状がおこり、それらの原因が特別な病気ではないもので、日常生活に支障がでるような病態のことです。
更年期障害の原因の一つに、エストロゲンの低下があります。エストロゲンは年を取ると分泌が少なくなります。
きなこを摂取することでイソフラボンをカラダに取り入れることで、更年期障害を予防できるというわけです。
甲状腺機能低下症という病気があります。甲状腺は、甲状腺ホルモンを作っています。甲状腺ホルモンは、代謝をよくする、交感神経を刺激するなどのはたらきをもちます。
甲状腺機能低下症になると、甲状腺ホルモンの量が減るため、代謝が悪くなることでむくみがでたり、寒がりになったり、便秘になったりします。
甲状腺機能低下症は、飲み薬で治療できます。自分の体で甲状腺ホルモンを十分な量、作れなくなったことが病気の原因なので、甲状腺ホルモンを外から補えばいいのです。
更年期障害も同じように、エストロゲンが足りないのでエストロゲンを補うことで予防することができます。
このように、きなこにはイソフラボンが含まれており、それがエストロゲンと似た働きをするため、きなこを摂取することで更年期障害を予防する効果があります。
ダイエット効果
きなこにはサポニンが含まれており、これが脂肪の蓄積を防ぎます。
サポニンとは植物の根、葉、茎などに含まれている苦みの成分のことです。コーヒーや抹茶の苦みはサポニンによるものです。
サポニンは血管にこびりついたコレステロールや中性脂肪などの余分な脂質を取り除いて肥満になるのを防ぐ働きをもっています。
油をさわったあとの手はべたべたしています。石鹸で手を泡立だせることで効率よく油を落とすことができます。サポニンも水を加えると泡立ちます。サポニンは手洗いの時の石鹸と同じようなはたらきを血管内の脂質に対してももっています。
このようにサポニンは血管内の脂質を除去することで脂肪の蓄積を防ぎ、肥満予防に役立ちます。
このように、きなこは大豆の栄養を豊富に含んでいるため、健康増進に役立つ食品です。また便秘の解消効果だけでなく、健康増進、美容、更年期障害を予防、ダイエットを助ける働きももっています。
便秘を解消する2つの栄養
上記で、きなこは健康増進、美容、更年期症状の改善、ダイエット補助に有効な食品であると説明しました。これだけ優れているきなこですが、冒頭でも説明したとおり、便秘を解消する効果もあります。
その理由は、きなこに含まれている豊富な栄養には、大豆オリゴ糖と食物繊維という便秘を解消する働きをもったものが含まれているからです。
これら2つの栄養は、どちらも腸の働きをよくする効果があります。また、食物繊維には便をやわらかくする効果もあります。
以下では、大豆オリゴ糖と食物繊維が便秘を解消する理由について説明します。
1.大豆オリゴ糖
きなこに含まれる大豆オリゴ糖は、腸内の善玉菌を増やすことで便秘の解消に役立ちます。
なぜなら、大豆オリゴ糖は消化・吸収されることなく大腸に運ばれ、善玉菌の栄養源となり、善玉菌が増えるのを促すからです。
善玉菌は食物繊維を発酵して乳酸や酪酸などといった短鎖脂肪酸を作り、腸内を酸性にします。
短鎖脂肪酸は脂肪酸の一種であり、ヒトのカラダを有害物質から守る、発がん、肥満、糖尿病を予防する、食欲を抑える、免疫系を調整するなど、健康の維持に不可欠な役割を担っています。
善玉菌が作り出す短鎖脂肪酸によって腸内が弱酸性になると、悪玉菌は増えにくくなります。悪玉菌は弱酸性の環境が苦手だからです。
腸内には一定のバランスで腸内細菌が生息しています。悪玉菌の数が減れば善玉菌の数が増えます。こうして腸に刺激が与えられてその動きが活発になり、便秘が解消します。
悪玉菌に支配された腸の動きと善玉菌が豊富な腸の動きは、たとえるなら、普通列車と新幹線ほどにスピードが違います。普通列車では移動に約10時間かかりますが、新幹線なら3時間程度で移動できます。
このように、大豆オリゴ糖は腸内の善玉菌を増やし、悪玉菌を減らし、腸の動きをよくすることで便秘の解消に役立ちます。
2.食物繊維
きなこの16.9%は食物繊維でできています。食物繊維が豊富なことで有名な野菜に含まれる食物繊維の割合をみてみると、ごぼうで5.7%、キャベツで1.8%、ほうれんそうで2.8%です。このことを考えると、きなこが16.9%の食物繊維を含んでいることは驚異的であるといえます。
そして、きなこの大きな特徴として、含まれている食物繊維の大半(きなこの15%)が「不溶性食物繊維」だということが挙げられます。
不溶性食物繊維を多く含んでいると、特にダイエット中の便秘に対する効果が強いです。不溶性食物繊維は便を大きくして腸に刺激を与えることで腸の動きを助けます。そのため、食事量が少ないことが原因で起こる便秘に効果的です。
なお、きなこに含まれる残り1.9%の食物繊維は、「水溶性食物繊維」です。水溶性食物繊維は、不溶性食物繊維によって量が増えた便にぬめりを加えて、便通をよくします。
以下でこれらの2つの食物繊維が便秘を解消するのに役立つメカニズムについて説明します。
1.水溶性食物繊維
水溶性食物繊維は水に溶ける食物繊維であり、腸の動きを改善することと便を柔らかくすることにより、便秘を改善します。
水溶性食物繊維が腸の動きを活発にする理由は、オリゴ糖と同じです。つまり、腸内の善玉菌を増やすことで腸の動きを助けます。
水溶性食物繊維がはお腹の中でゼリー状になって便に水分を与える上、ねばねばしたりぬるぬるしたりする性質をもっています。
水溶性食物繊維は、乾燥わかめとよく似ています。乾燥わかめはとても固く、かどで皮膚の柔らかいところをこすれば痛みを感じるほどです。しかし、水分を加えるとやわらかくなり、ぬるぬるとした食感がうまれます。
このように水溶性食物繊維は腸の動きをよくすること、また便をやわらかくしてぬめりを与えることで便秘の解消を助けます。
2.不溶性食物繊維
不溶性食物繊維は水に溶けない食物繊維であり、便のかさを増やして腸の動きをよくします。
腸の中に食べ物の残りかすや便が多いほど腸が引き延ばされ、腸に刺激が与えられます。引き延ばされて刺激を受けた腸は、収縮する動きも強くなります。
小さく引いた弓の弦は、小さく戻ります。大きく引いた弓の弦は勢いよく戻り、強い力を発揮します。
このように、不溶性食物繊維は便のサイズを大きくすることで腸への刺激を増し、便秘の改善に寄与します。
まとめると、きなこに含まれる食物繊維は腸内の善玉菌を増やしたり便をやわらかくしたりするとともに腸へ刺激を与えて活性化させることで便秘の解消に役立ちます。
きなこのおすすめの摂取量
ここまで、きなこは大豆オリゴ糖と食物繊維という便秘の解消に効果の高い栄養を含んでいると説明しました。中には、早速きなこで便秘を解消したいと考えている方もいらっしゃるのではないかと思います。
そこでここでは、きなこのおすすめの摂取量について説明します。
きなこは、1日に20~40g摂取することがおすすめです。これは、大さじでいうと4~8杯程度になります。
きなこに含まれている大豆オリゴ糖と食物繊維は、摂れば摂るほど便秘に効果があります。ただ、きなこを摂りすぎると乳癌や子宮内膜症など、女性が気を付けなければならない病気になるリスクが高まる可能性があります。
きなこに含まれている大豆イソフラボンが長い間乳腺や子宮に作用し続けると、乳癌や子宮内膜症になるリスクが上がる恐れがあります。
また、男性の場合、胸が大きくなる恐れがあります。
大豆イソフラボンのリスクについては、内閣府食品安全委員会事務局がまとめている下記のQ&Aが参考になります。
このように大豆イソフラボンのリスクも踏まえると、きなこは1日に20~40gを目安に摂取すれば、安全に最大限の便秘改善が得られます。
きなこを使ったおすすめのレシピ
最後に、きなこを効率よく摂取するためのおすすめのレシピを紹介します。
きなこは、先ほど説明した1日あたりの摂取量にさえ気をつければ、どのように摂ってもかまいません。
調理法にもとくに制限はありません。
食物繊維は火を通したり、炒めたりすることで減ってしまうという研究結果がありますが、たくさんは減りません。ですから、食べやすい方法で食べることが大事です。
ただ、きなこは粉末なのでそのまま食べるのはやや難しいものです。そこで、おすすめのレシピを紹介します。
きなこはいろいろな飲み物や食べ物に混ぜることで摂取しやすくなります。具体的には、牛乳、豆乳、ココア、ヨーグルトなどに混ぜるのがおすすめです。
以下でおすすめの組み合わせを順に紹介します。
第1位:きなこ+牛乳
きなこと牛乳を混ぜて飲みます。牛乳は多くの家に常備されており、手軽です。
第2位:きなこ+豆乳
きなこと豆乳を混ぜて飲むこともできます。この組み合わせでは豆乳に含まれるイソフラボンも同時にとることになります。
先ほど、きなこに含まれる大豆イソフラボンは、乳がんなどの危険性があると説明しました。しかし、毎日、きなこをたくさん混ぜた豆乳を大量に飲むのでなければ過剰摂取にはなりません。
具体的な上限の量は、1日に豆乳1パック(200g)にきなこ大さじ4杯という組み合わせです。
この量までであれば、きなこと豆乳を混ぜて飲むのもおすすめです。
第3位:きなこ+ココア
きなことココアも混ぜることができます。この組み合わせではココアの食物繊維も同時にとることができます。
第4位:きなこ+ヨーグルト
きなことヨーグルトを混ぜるのも可能です。ヨーグルト自体のも整腸作用があるため、便秘に対する相乗効果を期待できます。
第5位:きなこ+味噌汁
きなこを味噌汁に入れるのもおすすめです。味噌汁は発酵食品です。きなこと合わせて腸内の善玉菌を増やし、便秘を解消する働きを強めることができます。
きなこを使ったレシピはいろいろありますが、日々、継続して摂取することを考えると、牛乳、豆乳、ココア、ヨーグルト、味噌汁など、日常的に口にすることができる食品との組み合わせがおすすめです。
まとめ
この記事では、きなこがとても優れた食品であることやきなこが便秘解消に役立つ理由、さらにきなこのおすすめの摂取量とレシピについて解説しました。
きなこは、大豆とほぼ同じ栄養分を含んでおり、とても優れた食品です。
きなこには水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方の食物繊維が含まれています。
水溶性食物繊維は腸内の善玉菌を増やして腸の動きを助けることと腸の中でゼリー状になり便に水分を補給して便をやわらかくすることで便秘を改善します。
不溶性食物繊維は便の大きさを大きくして腸へ刺激を与えることでその動きを活性化させることで便秘の解消に役立ちます。
きなこは1日に20g~40g摂取することがおすすめであり、おすすめのレシピとして、牛乳や豆乳、ココア、ヨーグルト、味噌汁などに混ぜるものがあります。
ですから、野菜やヨーグルトで便秘を解消しようと思ってもなかなか毎日食べられないという方には、きなこを牛乳や豆乳などに混ぜて便秘を解消する方法をおすすめします。