はじめに

便秘のつらい症状に悩み、便秘の薬が手放せない方は多いです。便秘の薬の中には癖になりやすいものがあり、薬に依存してしまう人はたくさんいます。薬がないと排便できない状態にまでなってしまい、困ってしまうのです。

生活習慣が乱れていたり、食事習慣が悪かったりすることで便秘になります。この場合、原因となっている生活習慣の乱れを改善したり、食事内容を見直したりすることによって便秘を解消できます。

ただ、排便に関する生活習慣は個人差が大きいです。実際にどの生活習慣がその人の便秘の原因となっているかを判断するのは難しいです。しかし、どのような便秘の人であっても必ず注意すべきことが一つあります。それは、便意を感じたら我慢せずに排便につなげることです。

便意は我慢でおさまる

我慢をすると便意はおさまります。トイレに行きたいと感じても、そのときにすぐにトイレに行ける状況でない場合、我慢をしていたら便意が過ぎ去ってしまった経験は誰にでもあると思います。

なぜ、我慢すると便意はおさまるのでしょうか。それを理解するために便意がどのようにして起こるかも含めて説明します。

直腸に便がたまると人は便意を感じる

出典:最新医療情報(健康管理・病気) | 2016年9月 | 中央区八丁堀駅から徒歩1分、内科での診察は高橋医院へ

便意は直腸に便がたまると起こります。直腸は便がたまることで膨らみ、内側の圧力があがります。その結果、直腸の内側の壁は刺激をうけます。その刺激が脳に伝えられることで人は便意を感じます。

便意を我慢すると脳はそれを不要なものであると勘違いする

便意はこのように直腸に便がたまることで引き起こされます。本来であれば便意を感じたらすぐにトイレに行き排便することで、直腸の便を体の外に出さなければなりません。しかし、便意を感じても我慢をしてしまうと、脳は便意を必要のないものであると勘違いしてしまいます。

たとえ便意をもよおしても排便につながらないのであれば、脳は便意を意味のないものであるととらえてしまいます。このようにして脳は一度感じた便意を見ないふりしてしまうのです。

便意の我慢をたまにするのであれば大きな問題はないと思います。社会人であれば仕事中であったり、学生であれば授業中であったりするなど、さまざまな理由で仕方ないこともあると思います。

しかし、「便意を我慢しては便意を鎮める」ことを習慣にしていると、やがては便意自体が起こらなくなります。

正常であれば直腸に便がたまると便意を感じます。せっかく感じた便意も我慢してしまうと、脳は便意を見過ごしてしまいます。これを繰り返していると、やがては直腸に便がたまったときに最初に感じるべき便意にも脳は反応しなくなります。便意を感じても排便に至らないのであれば、便意自体を感じる必要がないと脳が認識してしまうからです。

なぜ、便意を我慢すると便秘になるのか

例えば、音響外傷という病気があります。これは、大きな音を集中的に聞き続けたことが原因で耳が聞こえにくくなった状態です。
ロックコンサートに行った後やヘッドフォンで大きな音を聞き続けた後などに家族や友人との会話が少し遠く感じたことはないでしょうか。
これは、大きい音という強い刺激を耳が受け続けたことで、音に対する体の反応が鈍くなることで起こります。音に限らず、人の体は外から強い刺激を受けることで、そのあとにその刺激に対する感度が下がるということはよくあります。

直腸にあるセンサーが感じ取る便の刺激である便意についても同じことがいえます。便意を我慢し続けると脳はその便意を感じにくくなってしまうのです。そして、直腸に便がたまっても便意を感じないために排便できない状態が続くと、慢性の便秘になります。

便意を我慢しないようにしたら便秘が改善した女性

ここまで述べたことは、多くの人で起こります。

例えば私は消化器内科で働いていますが、便秘の薬を複数の種類、毎日服用しなければ排便ができなかった中年の女性患者さんが私の消化器内科の外来を受診したことがあります。この患者さんは、以前に腸閉塞で入院したこともあります。

このとき私は、排便習慣について聞いてみました。朝食はとることもあればとらないこともあり、朝食をとらないときはヨーグルト、豆乳、野菜ジュースなど、何かしらのものを口にするようには心掛けていました。

また、職場には45分ほどかけて車で通勤していました。通勤の最中に便意を感じることがあっても就業時間に間に合うために我慢をしてしまっていたようです。

こうした問診の中から、便秘の原因は「便意を我慢していることではないのか」と考え、便意を我慢しないことがいかに大切かを説明しました。通勤の最中に感じる便意はとても大事であるため、朝、早起きをして排便をしてから家をでることを提案しました。しかし、朝の早起きはできないとのことでした。

そこで、車を運転中に便意を感じた場合、最寄りのコンビニエンスストアでトイレを借りて、排便する努力をするように伝えました。就業時刻の問題もありそれも難しいようでしたが、便意の我慢を続けているとやがては便意さえも感じなくなってしまうことを説明しました。また、今後さらにひどい便秘にならないために、便意を感じたらそれを排便につなげることはとても重要であることを理解していただきました。

患者さんは便意を感じたらできるだけトイレに行き、排便することができるように努力してくれました。通勤経路のトイレが使用できるコンビニエンスストアをチェックし、便意を感じた場合に最寄りのコンビニエンスストアでトイレを借りるようにしました。

最初は毎回、排便できるわけではなかったようですが、少しずつ便意が排便につながり、便意が起きる回数も増えました。時間はかかりましたが薬を少しずつ減らすことができ、最終的に薬がなくても便意を感じて気持ち良く排便できる状態にまで便秘が改善しました。

直腸の働きが悪いことによる便秘

これまで説明したように便意を繰り返し我慢することで直腸の感度は低下し、そもそも脳が便意を感じなくなってしまいます。このように直腸に便がたまっているのに排便ができないタイプの便秘は直腸性便秘と呼ばれます。

直腸性便秘とは

広い意味での直腸性便秘は、便が直腸まで運ばれているのにも関わらず排便できない状態をさします。便意を感じる力が弱くなってしまっているために直腸に便がたまっていても排便できないという、これまでに説明したタイプの便秘は直腸性便秘に該当します。

ただ、直腸性便秘の中には便意があっても排便できないタイプの便秘もあります。この場合、便が直腸まで運ばれてきて、直腸の中の圧力があがることで直腸が刺激され、脳が便意を感じます。便意を感じるのでトイレに行って排便しようとしますが、肛門の働きが悪いために排便ができません。

排便のためにはお腹の周りの筋肉がスムーズに働くことが必要です。お腹の中の筋肉の働きで、腹圧(お腹の中の圧力)が上がります。

腹圧が上がると直腸にたまった便が肛門から押し出されようとします。このタイミングで丁度よく肛門が開くことで順調に便が排出されます。

直腸性便秘ではこの働きが悪くなります。便意があっても腹圧がかからなかったり、腹圧がかかっても肛門が開かなかったりします。

腹圧はどうやって上げるの?

腹圧をかけるのには腹筋を中心とするお腹まわりの筋力が十分にあることが不可欠です。このためにお腹周りの筋肉のトレーニングが不可欠です。

簡単にできることに腹式呼吸があります。腹式呼吸は排便に必要なお腹周りの筋肉を鍛えるだけでなく、ストレスの解消にも効果があり、自律神経の働きを整えることによっても便秘を改善できます。

硬い便が肛門の近くに貯まってしまっているときには浣腸が有効

便意があるのに排便できない場合、肛門のすぐ奥で硬い便が肛門をふさいでしまっていることが原因であることがあります。この場合、浣腸をすることで肛門の奥をふさいでいる硬い便をやわらかくすると、栓がとれたように気持ちよく排便できることがあります。

浣腸は繰り返すとそれ自体が直腸性便秘の原因になるため、使い過ぎは禁物です。ただ、応急処置的に適度にしようすることは便秘の改善に有効です。

便意の我慢が原因で起こった便秘の解消法

それでは、どのようにして便秘を解消させるように生活習慣を変えればいいのでしょうか。

現代人は忙しい生活を送っています。朝、ゆっくりとトイレに座る時間をとれないことが便秘を悪くしています。

朝食を食べると胃腸の動きが活発になり、直腸という肛門の出口付近に便が移動することで便意を感じます。それにより人はトイレに行き、排便することができます。

仕事や学校に行かなければならないため、少しの便意を無視して家をでてしまうことにならないために、早起きしてトイレの時間を確保することが便秘の予防、改善に有効だといえます。

しかし、夜遅くに寝ることが習慣となっており、早起きをすることができない人もいると思います。このような人は、通勤中に便意を感じた場合にその便意を大事にし、我慢しないでイレに行けるようにしてください。

電車で通っている人は各車両や駅のトイレの位置を確認し、便意があったらすぐにトイレに行けるように準備をしてください。車で通っている人は通勤経路の公衆トイレやコンビニエンスストアの位置をチェックし、すぐにトイレに行けるようにしてください。

朝、早起きしてトイレの時間を確保できない人でも、通勤途中に発生した便意を排便につなげる努力をすることで、便秘を解消できます。

便意がおきやすいタイミング

すでに便意が起きにくくなってしまった人では、そもそも便意自体がほとんど感じられないかもしれません。それでも便意がまったくないということはないはずです。少しでも感じた便意を大切にし、排便につなげる努力をすることで、便意の復活が期待されます。

そのために、便意が起きやすいタイミングを知ることが大事です。

便意は朝起きてからと、食事後に起きやすいです。朝起きてから食べ物や飲み物をある程度口に入れることで、胃や腸に刺激が加わり、胃腸が動いて刺激され、直腸も刺激されて便意を生じます。起床後はまず何かを口にすることが大事です。

食事をとることで胃腸を刺激し便意をおこす

また、朝に限らず、食事の量を多くすると胃や腸の動きが活性化されます。これにより、胃腸の働きが促され、直腸に刺激が伝わり便意の発生につながります。

だらだらと間食を続けるのではなく、朝、昼、晩にしっかりと一定量の食事をとることで消化管にメリハリのある刺激が加わります。このことも便意の復活に効果的です。

ダイエットで便秘になる理由

そういう意味では、ダイエットをすると便秘になります。その理由は、食べる量が減るからです。ある程度の量の食べ物を食べることで胃と腸にほどよい刺激が加わります。この刺激は胃と腸の蠕動運動を促します。

蠕動運動とは胃や腸が拡がったり縮まったりすることで、食べたものを口側から肛門側の消化管に運ぶ働きのことをいいます。蠕動運動が起こることによって、ようやく排便が促されると考えてください。

ダイエットをすると食事量が減るため、胃腸の蠕動運動が起こりにくくなります。また、食べ物が減ればつくられる便も減ります。便が作られる量が減るうえに、胃腸の動きも悪くなるため、直腸に便がたまりにくくなります。直腸に便がたまらなければ便意もおこりません。これらの理由でダイエットをすると便秘になります。

ダイエット中でも便秘にならないために

では、ダイエットをしたいけれども便秘は直したいという人はどのようにすればよいでしょうか。

ダイエットをするときに食事の量を減らす理由は、カロリーをとりたくないからです。こうして食事量が減るために便秘になります。

それならば、食事量、すなわち(食べるもののボリューム)を減らさないけれども、カロリーは減らすようにすればよいのです。具体的には、しらたき、こんにゃく、きのこ類を食べましょう。

これらの食材はボリュームがあり、お腹にたまります。お腹にたまるということは胃腸が刺激され、蠕動運動も促されるのです。また、便のカサも増やしてくれます。

したがって直腸にも便が行き届き、直腸の粘膜に適度な刺激を与えてくれるため、便意を起こすのにもとても効果的です。

それでいてカロリーはほとんどありません。ダイエット中の便秘の予防にはしらたき、こんにゃく、きのこ類など、低カロリーでありかつボリュームのある食べ物を取り入れましょう。

家以外でも遠慮せず排便しよう

中には、家の外では大便をしないことを習慣にしている人もいます。とくに小学生の男子など、学校で大便をすると馬鹿にされるという雰囲気があります。

このようなことを理由に、子供のうちから家の外では大便をしない癖がついている人がいます。これは明らかに、その人にとって将来の便秘の原因になっています。恥ずかしいという気持ちがあるかもしれませんが、便秘になって便秘薬を手放せなくなるデメリットを考え、なるべく便意を我慢せずに排便することが大事です。

まとめ

いろいろな理由で便意があってもすぐにトイレに行けない状況があると思います。
しかし、軽く考えているとそれが原因で便秘を悪化させてしまいます。「朝、早起きしてトイレの時間を確保する」「何かをしている最中であったとしてもトイレの時間を大事にし、他のことよりも優先することを心がける」など、できるだけ便意を排便につなげることで便秘を改善、予防できます。
このことを意識して、便意を我慢しない生活習慣を実行に移すことが便秘改善には不可欠です。

 
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