妊娠がきっかけで便秘になってしまう人がいます。また、もともと便秘がちな人がさらにひどくなることもあります。

排便したくてお腹にぎゅっと力を入れたくても、お腹に赤ちゃんがいるため、気を使っていまいち力いっぱいいきめません。また、お腹のマッサージをすることにより腸に刺激を加えて排便する方法も、やはりお腹の子供を心配して使えません。

なかなか便秘がよくならないと、赤ちゃんに悪い影響を与えてしまうのではないかと悩んでしまいます。

妊婦さんが便秘になりやすい理由は、妊娠初期~中期は「ホルモンの分泌」と「つわり」の2つ、中期~後期にかけては「子宮の拡大」と「運動不足」の2つの合わせて4つです。そして便秘を解消する方法には、「食事や飲水に関する習慣の見直し」や「乳酸菌の摂取」、「排便習慣の改善」、「カラダを温める」、「軽めの運動をする」などがあります。

ここでは、妊娠すると便秘になりやすい4つの理由と安全に行える便秘の対処法を解説します。

女性は男性よりも便秘になりやすい

そもそも、女性は男性よりも便秘になりやすい体質です。その理由は、プロゲステロンという女性ホルモンの影響や男性にくらべて筋力が不足していること、またダイエットをしていることが多く、便意を我慢しやすい傾向があるからです。

以下では、女性が男性よりも便秘になりやすいこれら4つの理由について説明します。

プロゲステロン

女性が便秘になりやすい1つ目の理由は、プロゲステロンという女性ホルモンの影響です。

プロゲステロンとは、黄体ホルモンとも呼ばれる女性ホルモンです。このホルモンは筋肉が収縮する働きを弱める効果があるため、大腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)が抑えられます。そのため女性は便秘になりやすいのです。

なお、プロゲステロンについては下でも詳しく説明しています。

筋力不足

女性が便秘になりやすい2つ目の理由は、筋力の不足です。実は排便にも筋力が必要になります。具体的には、排便は腹筋を使い、腹圧をかけることでおこります。筋力の弱い女性は男性とくらべると排便に必要な力をかけるのが苦手なため、便秘になりやすいのです。

ダイエット

女性が便秘になりやすい3つ目の理由は、ダイエットです。

ダイエットをすると食事量が減ります。食事量が減ると作られる便の量も減って大腸への刺激が少なくなり、腸の動きが悪くなります。このため便秘になりやすいのです。

便意の我慢

女性が便秘になりやすい4つ目の理由は、便意を我慢しやすいことです。女性は男性よりもトイレに行きづらいという社会的状況があります。

便意は我慢をすると消えてなくなることがあります。しかし、いつも我慢していると便意そのものを感じなくなるのです。便意がないと便が直腸にたどり着いていても、トイレに行かないので、排便につながりません。このため女性は男性よりも便秘になりやすいのです。

このように、女性はホルモンの影響、筋力不足、ダイエット、便意を我慢しやすい社会的状況のため、ただでさえ男性よりも便秘になりやすいのです。その上、妊娠するとカラダに変化が起き、さらに便秘になる可能性が高くなります。

以下では、妊娠によるカラダの変化について詳しく説明します。

妊娠の初期~中期:ホルモンの分泌とつわり

妊娠の初期~中期には上でも説明したプロゲステロンというホルモンの分泌とつわりが原因で便秘がひどくなります。以下でこの2つについて説明します。

1.プロゲステロンは胃腸の働きを低下させる

プロゲステロンが分泌されることにより、胃腸の働きが低下します。プロゲステロンとは、子宮の収縮をやわらげて早産や流産を起こりにくくする、黄体ホルモンとも呼ばれる女性ホルモンのことです。

ところが、プロゲステロンは子宮だけでなく、胃腸の筋肉までやわらげてしまいます。その結果、胃腸の働きが低下するのです。

抗生物質の例を考えてみましょう。細菌による感染症にかかった場合、抗生物質を使った治療が行われます。抗生物質は感染症の原因となったばい菌を殺すことで、病気を治します。

ところが、抗生物質はヒトのカラダにとてもよい働きをしている腸内細菌まで殺してしまうのです。抗生物質により破壊された腸内フローラが改善するまでにはとても時間がかかります。

腸内フローラとは、腸内細菌の集まりのことです。ヒトの腸の中では、とてもたくさんの種類と数の細菌が仲間同士でグループをつくって生息しています。その様子を顕微鏡で観察すると、お花畑のように見えます。お花畑のことを英語でフローラ(flora)ということから、腸内細菌の集まりのことを腸内フローラと呼びぶのです。

腸内フローラを顕微鏡で観察した様子

出典:A look at our disappearing microbes | Scope Blog

感染症の原因となるばい菌を殺すための抗生物質が腸内フローラまで破壊してしまうのと同じように、子宮の収縮をやわらげることで早産、流産を予防するプロゲステロンも胃腸の筋肉の働きを弱めてしまいます。その結果、便秘を悪くしてしまうのです。

2.つわりで胃腸の働きが低下する

つわりが原因で便秘が悪化します。つわりにより、食べ物を食べられない、水を飲めないなどに至るからです。以下ではつわりで胃腸の働きが低下する理由を説明します。

食事量が減ると便秘になりやすい

腸は刺激を受けると活発に動きます。具体的には、腸の内側に食べ物により圧力がかかることにより腸は活発に動くのです。

食べ物が腸に届き、そのボリュームによって腸の粘膜が引き伸ばされることで腸は刺激を受けます。そして、腸は食べ物を肛門側に押し進めようとして蠕動運動がおこります。

このように食べ物が腸の中を通過して便になるとき、腸の粘膜を刺激します。

便の量が減れば大腸への刺激が少なくなり、蠕動運動が行われません。そのため便は、大腸の中をゆっくりと進んでいきます。

たとえば、風船に力いっぱい空気を吹き込むと大きくふくらみます。そして手をはなせば風船は勢いよく縮みながら中の空気は外にでます。

一方、少ししか空気を入れてない風船はあまりふくらまず、ゆっくりと縮みます。このとき、中の空気が外に押し出されるスピードも遅めになります。

これと同じように、便は大腸の中にとどまっている時間が長ければ長いほど硬くなります。大腸の粘膜で便の水分が吸収されるからです。

このように、食べる量が少ないと大腸への刺激の低下につながり、蠕動運動が弱くなることで便秘の原因になります。

飲む水の量が減ると便が硬くなる

便の硬さは水分量で決まります。水を多く含む便はやわらかくなり、水が足りない便は硬くなります。飲水量が減り脱水になると、カラダは便から水分を多く吸収します。その結果、便が硬くなり、排便しにくくなるのです。

お米でたとえると分かりやすいです。水分の量を多めにすればとてもやわらかいお粥になります。

一方、普通に炊いたご飯を茶碗によそり、サランラップをせずに放置したとします。水分が蒸発して失われることで、ご飯はカチコチに硬くなります。適度なやわらかさにするためにはある程度の水分が必要です。

このように飲む水の量が少ないと硬便になり、便秘を引き起こします。

以上のとおり、つわりで食事や飲む水の量が減ると胃腸の働きが低下し、便秘が悪化します。

ここまで説明したとおり、妊娠の初期~中期はプロゲステロンというホルモンの分泌とつわりが原因で便秘がひどくなります。

妊娠の中期~後期:子宮の拡大と運動不足

妊娠の中期~後期には子宮が拡大することと運動量が減ることが原因で便秘の症状が悪くなります。以下でこの2つについて説明します。

3.子宮が拡大して便の通りが悪くなる

大きくなった子宮が大腸を圧迫することにより、便の通りが悪くなります。子宮と大腸はとても近い位置にあるからです。

たとえば、庭の植木にホースで勢いよく水をまいていたとします。急に水の出が悪くなってホースをたどってみたら、いたずらっ子がホースを踏んでいたというような経験はないでしょうか。

これと同じように、大腸が拡大した子宮によって押しつぶされて便秘になります。

4.運動不足で腸への刺激が減る

妊娠が進んで大きいお腹を抱えた妊婦さんは、身体が重く辛いため、運動量が減る傾向にあります。また、お腹が張っているときに運動すると、早産を引き起こす可能性が高くなります。ですから、お腹の張りを感じているときには安静を心がけなければなりません。

運動量が減ると、お腹の周りの筋肉の動きが減少し、腸への刺激が減ります。結果として腸の蠕動運動も低下し、便秘を引き起こすのです。

ここまで説明したように、妊娠の中期~後期には子宮が拡大することと運動量が減ることが原因で便秘の症状が悪くなります。

妊婦さんが行う便秘の解消法のポイント

ここまで、妊婦さんが便秘になりやすい理由を妊娠の前半、後半に分けて説明しました。では、つわりやお腹の張りに悩む妊婦さんが便秘を解消するにはどのようにしたらよいのでしょうか? 胎児に悪い影響を与えないよう、また母体に負担をかけずにできることを行う必要があります。

具体的には、食事・飲水やトイレの習慣を見直したりカラダを温めたりすると効果的です。また、適度な運動でも便秘が解消されます。

以下では、つわりやお腹の張りに悩む妊婦さんが便秘を改善する方法を説明します。

食事・飲水に関する習慣を見直す

妊婦さんが便秘を改善する1つ目の方法は、食事・飲水に関する習慣を見直すことです。なぜなら、食べ物を食べたりや水を飲んだりすることは妊婦さんでも必ず行っていることであり、便秘の改善法の中でも取り組みやすいものだからです。

具体的には、毎日の朝食や果物、乳酸菌やビフィズス菌、発酵食品、そして水分をとる習慣をつけることにより、便通を改善できます。以下でこれらについて詳しく説明します。

朝食を食べる

しっかりと朝食を食べることは母体にも胎児にも有益です。なぜなら、朝食は母児両方の1日の原動力になるからです。朝食を食べることで寝ている間の絶食している時間帯に下がった血糖値が上がります。この栄養により赤ちゃんは大きくなります。

たとえば、雨が降らない日が続いたときの畑の作物は、今にも枯れそうになってしまいます。水分は植物が生長するのに不可欠です。

夕食を食べて就寝し、朝起きて朝食を食べるまでの絶食期間は、植物の例でいうカンカン照りが続いているときのようなものです。

朝食を食べることにより、寝ている間に下がった血糖値を上げることでカラダを目覚めさせることができます。さらに胃腸は朝一の刺激で、反射的に活動を始めるのです。この胃腸の活動は胃結腸反射(胃大腸反射)と呼ばれ、便秘の原因の中で大きな割合を占める腸の動きの低下を改善します。

たとえば、たくさん食べたり飲んだりしたあとにお腹がぐるぐると動くのを感じ、便意を催して排便したという経験はないでしょうか? これが胃結腸反射です。胃に食べ物が入ってふくらみ動き出すと、大腸も活性化されます。便が直腸に移動し便意を感じ、排便行動につながるのです。

このように朝食を食べることは絶食により下がった血糖値をあげることで母児のカラダをめざめさせ、また胃結腸反射を引き起こすことで便秘の改善につながるため、妊婦さんにとても有益です。

果物を食べる

上記で朝食を食べることが大事だと説明しました。しかし、つわりで食事がとれないときもあるでしょう。そのような時に、もし食べられるのであれば果物を食べるとよいです。果物は手軽に食べることができ、食物繊維が含まれているため、便秘を改善する効果があるからです。

食物繊維には水溶性と不溶性の2種類があります。水溶性の食物繊維は腸内の水分を取り込み、便をやわらかくする効果があるのです。また、不溶性の食物繊維は腸内で水分を吸収して膨らみます。その結果、便のカサが増して腸への刺激になり、蠕動運動の活性化につながるのです。

水溶性の食物繊維を多く含む果物にいちじくやイチゴなどがあり、不溶性の食物繊維を多く含む果物にラズベリーやブルーベリーなどがあります。

このように果物は食物繊維の働きにより便秘を解消する効果をもちます。つわりの最中でも食べやすい果物を少しずつでもとるとよいです。

乳酸菌、ビフィズス菌、発酵食品を摂取する

つわりにより食事量が十分に確保できない場合、乳酸菌やビフィズス菌、発酵食品をとることをお勧めします。

乳酸菌やビフィズス菌は腸内フローラを改善し、善玉菌を増やすことで便秘を改善します。

 

善玉菌とは、腸内細菌の1つです。腸内細菌にはいろいろなものがありますが、善玉菌、悪玉菌、日和見菌(ひよりみきん)の3つに分けることができます。

善玉菌は体によい働きをし、悪玉菌は悪い働きをします。そして日和見菌はその時々で善玉菌か悪玉菌のどちらか優勢な方の味方をします。そのため、善玉菌を増やすことにより便秘を改善することができるのです。

乳酸菌、ビフィズス菌はサプリメントで手軽に摂取できます。また、希望すれば病院でも処方してもらえます。

サプリメントの利点は、多くの種類があることです。ヒトの腸内フローラは多種多様であるため、効果が高いサプリメントの種類も異なります。そのため、いろいろな種類から自分にあうものを見つけることができます。また、薬局でも気軽に買えるため、手に入れやすいのもメリットです。

その反面、保険診療で処方してもらう場合と比べて価格が高いことがデメリットです。

一方、処方箋薬のメリットは、保険診療のために安く手に入ることです。妊婦健診の際、医師に便秘で腸内細菌製剤を処方して欲しいと伝えれば、出してもらうことができます。

そして処方箋薬のデメリットは、効果がなかった場合に多くの種類を試すことができなかったり、医師によっては処方を嫌がられたりするかもしれないことがあります。

また、発酵食品にも腸内の善玉菌を増やし、腸内フローラを改善する効果があります。ですから、もし食べられるのであれば発酵食品を優先的に食べるのも有効です。発酵食品には、納豆、漬物などがあります。

妊娠すると食事の好みが変わるという話はよくあります。漬物がまったく好きではなかった人が突然、漬物をたくさん食べるようになることがあります。

漬物に限らず、発酵食品にはいろいろなものがあります。口にしやすいものを食べるとよいです。

このように、乳酸菌、ビフィズス菌、発酵食品などの腸内フローラを改善するものを摂取することで、腸内の善玉菌が増えて腸の働きがよくなり、便秘が改善します。

水分を1日1.5~2Lとる

水分摂取は手軽にできる便秘の解消法です。2Lのペットボトルのミネラルウォーターはコンビニで200円以下の値段で売られており、とても安いです。また、日本には自動販売機が至るところに設置されており、ミネラルウォーターを手にいれられない環境の方がめずらしいです。

このように水は簡単に手にできる環境が整えられており、便秘の解消法としておすすめです。

とくに、朝起きたらコップ1杯程度の水を飲むことを習慣にするとよいです。

朝一の胃腸への刺激は上でも説明したとおり、胃結腸反射を引き起こし、便意を促し排便行動を引き起こすきっかけになります。

朝、起きてすぐにコップ1杯の水を飲むと、水分が胃に入って胃を膨らませます。この刺激で大腸の蠕動運動が始まり、排便につながります。

しかし、つわりで水も飲めないという人も多いでしょう。一気に1.5~2L の水を飲まなくてもよいので、一口ずつでも口にして1日トータルで1.5~2L程度の水分摂取を心がけましょう。

このように、水分を1日にトータルで1.5~2Lとることは硬便を予防し、また特に朝にコップ1杯の水をのむことは大腸の動きを活発にして便秘を解消する効果をがあります。

トイレに関する習慣

妊婦さんが便秘を改善する2つ目の方法は、トイレに関する習慣を見直すことです。朝、便意がなくてもトイレにいき、排便を試みるようにしましょう。人によっては直腸に便が下りてきているのにも関わらず、便意がおきない人がいるからです。

具体的には、朝食を食べたり、コップ1杯の水をのんだりした後トイレに行き、お腹の感覚に注意を集中します。はじめは気が付くことができないかもしれませんが、次第に腸が動いている感覚に気が付くことができるようになります。その感覚を大事にし、排便につなげられるように、朝、便意がなくてもトイレに行くことが大事です。

また、便意を感じたら我慢せずにトイレに行くことも大事です。便意はいつも我慢していると次第に感じなくなってしまうからです。

便意はありがたいものであるととらえ、無視しないこと、やりすごさないことがとても大事です。

これは妊娠中だけでなく、将来の便秘を予防するためにも大事な習慣です。

身体を温める

妊婦さんが便秘を改善する3つ目の方法は、身体を温めることです。これにより大腸の蠕動運動を促すことができます。特にお腹が冷えると大腸の血流が悪くなり、動きが低下してしまうからです。

身体を温めるには、半身浴やフットバスがお勧めです。これらでカラダを芯から温め、じんわりとした汗をかくようにしましょう。

半身浴やフットバスは体を温めて大腸の動きをよくするだけでなく、ストレス解消にもつながります。自律神経の働きの乱れからくる便秘の改善にも役立つのです。

このように、身体を温めることにより大腸の動きが活発になり、便秘を改善することができます。

適度な運動をする

妊婦さんが便秘を改善する4つ目の方法は、適度な運動をすることです。適度な運動は自律神経の働きを整える、リラックス効果がある、腸の血流が改善する、腸へほどよい刺激を与えることにより大腸の働きを正常に戻します。

ただ、妊娠中、とくに後期はお腹がはっており、激しい運動はできません。そのため、母体、胎児に負担なくできる運動をしましょう。たとえば、ストレッチ、柔軟体操、ヨガ、マタニティースイミング、軽い散歩などがあります。

このような軽い運動は、ストレスを解消したり、自律神経の働きを整えたりすることで腸の働きをよくし、便秘を解消します。

ここまで説明したとおり、妊婦さんが便秘を解消する方法として、食事・飲水やトイレの習慣を見直したり体を温めたりする方法があります。また、適度な運動も効果的です。

まとめ

ここでは、妊娠すると便秘になりやすい4つの理由と安全に行える便秘の対処法を解説しました。

妊娠すると便秘のリスクがあがります。具体的には、妊娠の初期から中期の頃はプロゲステロンの作用で胃腸の動きが不活発になること、つわりにより食事や水分の摂取量が減ることが原因で便秘になります。

また、妊娠の中期から後期の頃は子宮が拡大して大腸の中の便の通過を邪魔すること、お腹が大きくなったり、お腹が張ったりして運動量が減ることが原因で便秘の症状が悪化します。

妊婦さんが便秘を解消するには、胎児に負担をかけないことが重要です。そのためには、食事・飲水の習慣、トイレの習慣、ストレスの解消、身体を温めること、適度な運動をすることなどで便秘を無理なく改善しましょう。

 
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