慢性腎臓病の患者さんは慢性便秘症にもなりやすいです。そして、慢性腎臓病の患者さんが長引く便秘に悩み、便秘の薬を使うときにはいくつかの注意点があります。

この記事では慢性便秘症の患者さんが便秘になりやすい理由や便秘薬を使うときに注意すべき点について解説します。

慢性腎臓病とは何か

まず、慢性腎臓病とはどのような病気なのでしょうか。

慢性腎臓病は英語でChronic kidney diseaseと書きます。これを略してCKDといいます。chronicは「慢性の」、kidneyは「腎臓」、diseaseは「病気」という意味です。

慢性腎臓病を分かりやすくいうと、腎臓が悪い状態が長く続いている病気のことです。

腎臓が悪いと尿検査でタンパクが陽性になります。また、血液検査でも腎臓の働きが低下していることが分かります。この状態が3か月以上続くものが慢性腎臓病です。

慢性腎臓病と慢性便秘症はともに高齢者に多い

慢性腎臓病の人は糖尿病や高血圧症など、その他の生活習慣病も患っていることが多いです。また、これらの病気は高齢になるほど患っている人が増えます。

さらに、慢性便秘症も加齢と共に増える病気です。

慢性腎臓病と慢性便秘症の両方とも年齢が進むと発症する人が多くなるので、結果的に慢性腎臓病の患者さんでは、慢性便秘症にも悩んでいるという人が多いです。

また、慢性腎臓病は高齢者に多く、高齢者には高血圧症が多いです。高血圧の治療としてカルシウム拮抗薬という血圧を下げる薬を使うと、その副作用で便秘の頻度が高くなります。

カルシウム拮抗薬には、具体的には、アダラート(一般名:ニフェジピン)、アムロジン・ノルバスク(一般名:アムロジピン)、コニール(一般名:ベニジピン)などがあります。

カルシウム拮抗薬は血管の筋肉をゆるめることで血管を拡張させ、これによって血圧を下げます。しかし、カルシウム拮抗薬は腸の筋肉もゆるめてしまいます。

食べたものを肛門にむかって運ぶため、腸は拡張したり収縮したりするのを繰り返しています。この腸の運動を蠕動(ぜんどう)運動といいます。この運動は腸の筋肉が伸びたり縮んだりすることで起こります。

カルシウム拮抗薬は血管の筋肉だけでなく腸の筋肉もゆるめてしまうため、腸の動きを悪くし、便秘を引き起こします。

高齢者の便秘症では、薬の副作用に注意する

高齢者は高血圧以外にも、さまざまな病気をもっているケースが多いです。ですから、血圧を下げるカルシウム拮抗薬以外にも、何らかの病気の治療薬で便秘が引き起こされている可能性があります。

もし便秘に悩んでいて副作用に便秘がある治療薬を使っているのであれば、他の薬に変更することができないかを担当医に相談するといいです。

たとえば、高齢者のうつ病を老人性うつといいます。この治療薬の中には便秘を引き起こすものがあります。具体的には、三環系抗うつ薬のトリプタノール(一般名:アミトリプチリン)やアモキサン(一般名:アモキサピン)などです。

三環系抗うつ薬は抗うつ薬の一種で、比較的初期に作られたものです。これは強い効果をもっていますが、便秘やのどの渇きなどの副作用がでることがあります。

他にも、高齢になり眠りが浅いことを理由に睡眠薬を内服しているために、副作用で便秘になっているケースがあります。

便秘の原因となる睡眠薬の代表に、デパス(一般名:エチゾラム)やハルシオン(一般名:ハルシオン)があります。

現在、薬にはいろいろな種類があります。便秘を引き起こしにくい薬に変えることができないかを一度考えてみましょう。

慢性腎臓病で便秘が起こりやすい理由

それでは、なぜ慢性腎臓病で便秘を生じるのでしょうか。

慢性腎臓病で便秘が起こりやすい理由の一つ目は、腸管への血流が悪くなることです。2つ目は薬の影響であり、3つ目は食事の影響です。

腸管への血流障害

慢性腎臓病ではカラダに尿毒素がたまりやすいです。尿毒素とは、尿素に代表される「血液中の老廃物」のことです。

腎臓の働きが正常であれば血液中から尿に老廃物が排泄されます。ただ、腎機能障害ではこれらの老廃物が血液中にたまります。

また、慢性腎臓病の方は動脈硬化を合併していることが多いです。

これらが原因で、慢性腎臓病では血管障害が起こりやすく、腸への血流が悪くなりやすくなります。

腸への血流が悪くなると、腸の粘膜が薄くなる原因になります。そうすると粘膜からの粘液の分泌が悪くなります。その結果、腸内での便の輸送がスムーズに行われなくなります。

さらに、血流が悪いと腸の筋肉の力も弱くなります。その結果、腸の蠕動運動が悪くなります。

これらの結果、慢性腎臓病では便秘が起こりやすいのです。

薬の影響

慢性腎臓病の患者さんは、血液中のK(カリウム)やP(リン)が上昇しやすいです。これを予防するために使われる薬に、経口カリウムイオン交換樹脂や経口リン吸着薬というものがあります。

この2つの薬は、水に溶けません。大腸の中で硬い便をつくる性質をもち、そのために便秘の原因になります。

食事の影響

慢性腎臓病の患者さんは、血中のカリウムが上昇しやすいため、カリウムを多く含む食事を食べ過ぎないようにしなければなりません。

カリウムを多く含む食べ物の代表に、野菜やイモ類があります。これらは食物繊維も多く含みます。

カリウムを摂りすぎないように注意すると、結果的に食物繊維が不足しがちです。この結果、慢性腎臓病の患者さんは便秘になりやすくなります。

透析患者と便秘症

慢性腎障害がさらに進行し、透析をうけている患者さんの場合、便秘になりやすい原因がもう一つあります。それは、水分制限です。

透析患者は自分の腎臓が働かないため、体内の水分量を調節できません。透析患者は水分を取りすぎてはいけないので、飲水制限をしています。

適度なやわらかさの便を作るためには、ほどよい水分が便に含まれなければなりません。透析患者は水分制限が原因で便に与えられる水分が不足しがちです。これが理由で、透析患者の便は固くなりがちであり、便秘の原因になります。

慢性腎臓病に合併した慢性便秘症治療のポイントと注意点

次に、慢性腎臓病の患者さんが便秘薬を使うときの注意点について説明します。

慢性腎臓病の人がよく考えずに便秘薬を使ってしまうと、大きな危険性があります。腎臓の働きが低下するとカラダの電解質に異常が起こりやすくなるからです。

そのため、腎臓の機能がどれくらい低下しているのかを確認し、慢性便秘症の治療が原因で電解質の異常が起こらないように注意して薬を選ばなければなりません。

慢性腎臓病の人は高マグネシウム血症に注意

具体的には、腎機能障害がある人が便秘薬の一つである酸化マグネシウムを内服すると、副作用で高マグネシウム血症になることがあります。

このため、慢性腎臓病の患者さんは酸化マグネシウムを使うときには注意しなければなりません。

高マグネシウム血症の症状

高マグネシウム血症で初期にもみられる症状に、悪心、嘔吐、のどの渇き、血圧低下、脈が遅くなる、皮膚が赤くなる、筋力が低下する、眠りがちになるなどがあります。

これらの症状がみられた場合、高マグネシウム血症の可能性があります。

腎機能障害がある方で便秘に対して酸化マグネシウムを内服している人は、定期的な血液検査でマグネシウムの値を測定してもらうようにするといいです。

慢性腎臓病の人でも安全に使える便秘薬

腎臓が悪い方でも長く安全に使える下剤に、ラクツロースとソルビトールがあります。これらは、腸管内に水分を保つことで便をやわらかくする薬です。酸化マグネシウムと同じ働きをします。

酸化マグネシウムと異なり、血液検査でマグネシウムの濃度があがってしまうようなことはありません。

ですから、慢性腎臓病の人でもモニラック・ピアーレ(一般名:ラクツロース)とD-ソルビトール(一般名:D-ソルビトール)は安全に使うことができます。

まとめ

慢性腎臓病と慢性便秘症は合併しやすいです。なぜ、便秘が起こりやすいのかというと、これには「慢性腎臓病では腸管への血流が阻害される」、「薬の影響」、「食事の影響」という3つの理由があります。

特に、慢性腎臓病の患者さんは、血液中のマグネシウムが高くなることがあるため、便秘薬の代表である酸化マグネシウムを使うときには注意が必要です。

慢性腎臓病の患者さんでも安全に使える薬にラクツロースとソルビトールがあります。これらは高マグネシウム血症のリスクがなく、長く使っても安心です。

 
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